第399章

彼女とは、そういう人間なのだ。幼い頃から修羅場をくぐり抜け、戦場の血風を肌で感じてきたからかもしれない。

派手な演出や劇的な展開には心が動かない。むしろ、静かに流れる細い水のような、ありふれた温もりにこそ、彼女は弱かった。

「今日のお召し物、とてもお似合いですよ」と唐沢楓は微笑んだ。

「そう?」

七瀬夫人は少女のように頬を染めた。「息子が選んでくれたの。家ではいつも楽な格好ばかりしているから、急にこんな正装をすると……なんだか落ち着かないわ」

「本当にお綺麗です、七瀬夫人」

唐沢楓は柔らかな笑みを浮かべ、七瀬烈司に視線を移す。「烈司さん、お目が高いですね」

自分に向けられたその...

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