第431章

「心配するな。楓は昔から損得勘定には聡いし、身の守り方も心得ている。向こうが会いたいと思えば、向こうから現れるさ。もし見つからないとしたら、理由は一つしかない。今は、お前に会いたくないってことだ」

その言葉を聞いた瞬間、水原悟の心臓の柔らかな部分を、極細の針で刺されたような感覚が襲った。すぐに血が噴き出すわけではない。だが、その微細な痛みは体の奥底で際限なく広がり、頭のてっぺんから爪先までを蝕んでいく。

電話を切った後も、茫然自失の虚無感に襲われたままだ。スマホを握りしめていた掌は、じっとりと冷や汗で濡れていた。

先ほどの唐沢佑の電話が、心にさざ波を立てている。

彼女も数年間、家族と...

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