第525章

白石加尾。

あの美しい男は、そんな名前だったのか。

芹沢加穂は、あの端正な顔立ちを思い浮かべた。目尻がわずかに吊り上がり、邪悪さと魅惑を湛えたあの顔を思い出すだけで、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。

あの夜、バーから帰って眠りについた後、夢の中にまであの顔が現れた。

自分でも信じられないことだった。

「もし、あいつを殺せと仰るなら、全力で……」芹沢加穂は滝のように汗を流し、ギリッと奥歯を噛み締めた。

「俺の女の兄貴だぞ。殺せと言われて、はい殺しますだと? 狂ってんな、お前」七瀬烈司は彼女を睨み下ろした。その瞳の奥には陰湿な光が渦巻いている。

芹沢加穂はビクッと身を震わせた。...

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