第530章

水原悟の手は微かに震えていた。生まれ持った自虐的なまでの精神力だけで、唐沢楓の傷を手当てし、ガーゼを巻き終えたのだ。

唐沢楓は横目で左腕に綺麗に巻かれた包帯を見つめ、心を動かされた。

彼の応急処置の手つきは、相変わらずプロフェッショナルだった。学んだことがDNAに刻み込まれているかのように、何年経とうとも、再び手を動かせば非常に熟練した技を見せる。

「ありがとう……」

唐沢楓の視界がふいに暗くなった。男がのしかかり、彼女をその胸の内に閉じ込めるのを、ただ見つめることしかできなかった。

「楓、違う方法で礼をしてくれないか」

彼女の返事を待つことなく、彼はもう我慢の限界だった。

水...

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