第20章

その頃、渡部家では。

日中、渡部綾香に会えず、彼女の手から株を引き出す算段も外れたことで、林野正明の胸の内は苛立ちにざわついていた。そこへ執事が恭しく足を運び、細工の凝った一通の招待状を差し出した。

「旦那様。村野先生より、サロン晩餐会へのご招待状が届いております」

村野――?

林野正明の心臓がどくんと跳ね、思わず立ち上がりそうになる。

村野といえば、この土地の古株の極道一族、その中枢にいる人物だ。根を張る人脈と資金力は桁違いで、彼が主催するサロン晩餐会は、政財界の名士が顔を揃える特別席。金や肩書きがあっても門前払いされる者がいる一方で、招待状一枚のために頭を下げ、裏で手を回し、血...

ログインして続きを読む