第22章

渡部綾香が顔を上げると、最新のオートクチュールのワンピースに身を包んだ女が入ってきた。

艶やかな容貌に、隙のないメイク。年の頃は二十代前半だろう。

そして今、その視線は露骨に渡部綾香の上から下へと舐め回し、口元を歪めて嘲りを滲ませていた。

――噂に聞く、先代組長に殊更かわいがられていたという鈴宮さん。鈴宮クルミ。

小山がわずかに身をかがめる。

「鈴宮さん」

だが鈴宮クルミは小山など存在しないかのように、まっすぐ渡部綾香の向かいへ行って腰を下ろした。腕を組み、顎を少し上げる。

「アンタが渡部綾香?」

渡部綾香は表情ひとつ変えず、傍らの水のグラスを取り、そっと口をつけた。まぶたす...

ログインして続きを読む