第28章

彼は――禁欲が長すぎただけだ。だからこそ、この女にここまで強く反応してしまう。

一度満たしてしまえば、この制御不能な熱も、いずれ引いていくはず。

渡部綾香は手早く、酒紅色のワンショルダーのドレスに着替えた。

くるりと振り向き、鈴宮京也を見上げる。

「……これでいい? 鈴宮さん」

声は柔らかくない。

鈴宮京也の視線が、彼女の上でほんの一拍止まった。酒紅色が肌の白さをいっそう際立たせる。露出を抑えたデザインで安っぽい色気は薄れているのに、骨の奥から滲む艶だけは隠せない。目を奪うほどに。

胸の底の違和感を無理やり押し込み、彼は小さくうなずく。

「行くぞ」

再び車に乗り込み、会場へ...

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