第33章

渡部綾香は、彼の――王が臣下の跪拝を待つような、あの姿勢を見つめた。指先がかすかに縮こまる。けれど足は止まらない。

彼女は書斎机の前まで歩き、距離を置いて立った。

「――俺に仕えろ」

鈴宮京也の声は低く掠れ、静まり返った書斎に落ちた。隠そうともしない、むき出しの要求。

渡部綾香は、幽暗な炎を宿すその目を正面から受け止める。今夜、もはや引き返す余地はない――そう理解した。

返事はしない。ただ手を上げ、身にまとったワインレッドのドレスの紐を解きはじめる。

急がず、焦らず。脱衣というより、厳かな儀式でも執り行うかのように。

鈴宮京也は椅子に腰を据えたまま、彼女が一歩ずつ近づくのを眺め...

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