第34章

彼は彼女を手に入れた。いちばん直接的なやり方で、所有を宣言してみせたのだ。

――なのに。

あの制御の利かない感覚は消えるどころか、骨髄にまで染み込んだみたいに、いっそう輪郭の掴めないものへと変わっていく。

扉の外。廊下は奥へ奥へと暗く、ひどく静かだった。

渡部綾香の身体は、まだかすかに震えている。

覚悟はできていたはずだ。けれど実際に起きた瞬間、物のように扱われ、確かめられるあの感覚が、残っていた自尊心を容赦なく引き裂いた。

……それでも。

彼女はすぐ顔を上げる。視線は鋭く、冷たく研ぎ澄まされていた。

大丈夫。

これは代価の一部に過ぎない。

背筋を伸ばし、臨時の客室へ向か...

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