第37章

朽ちかけたネットカフェの隅。渡部綾香はフードを目深にかぶり、いくつもの踏み台を経由して闇夜のバックエンドへ潜り込んでいた。林野佳恵に「ちょっとしたサプライズ」を仕込むために。

指先がキーボードを叩く音だけが、やけに大きく耳に残る。タスクの条件、実行のタイミング、偽装の層――細部を詰めていく、その刹那。

ぶる、と。

自作で仕込んだ超小型の警報が、指輪みたいに微かに震えた。

闇夜内部の逆トレース警告。レベルは高くない。けれど意味するところは一つだ。腕の立つ相手が、このノードを捕まえに来ている。

渡部綾香の背筋が冷たくなる。

早すぎる。

誰だ――?

迷う暇はない。彼女は一切の操作を...

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