第50章

「邪魔してないよな?」

人影より先に、低くざらついた声が落ちてきた。

鈴宮京也が扉口に立っている。身長と体躯だけで、ほとんどドア枠を塞ぐ勢いだった。

リリスは、開きかけた口のまま固まった。胸の奥から噴き出しかけていた糾弾も罵倒も、鈴宮京也の姿を見た瞬間、喉の奥へ無理やり押し戻される。

燃えたぎる怒りは、真っ赤に焼けた焼き鏝を氷水に沈めたみたいに急冷された。残ったのは、外へ吐き出せない圧迫感と、じわじわ灼ける痛みだけ。

理性――いや、鈴宮京也に対する本能的な畏れと、どうしようもない意識が、圧倒的な勢いで主導権を奪い返してくる。

(この人の前で、こんな醜態……見せられない)

(渡部...

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