第52章

大村の頬はざらついた地面に擦りむけ、口の端も裂けていた。だが反抗などできるはずもない。痛みに声を上げることすら怖くて、喉の奥で押し殺した嗚咽を漏らすだけ。瞳の底には、恐怖と絶望が淀んでいた。

リリスは、踏みつけるだけでは気が済まないとでも言うように、ふいに片手を持ち上げた。半分だけ残ったコーヒーカップの欠片が、掌に食い込んだまま。血でぬらぬらと光っている。

大村の瞳が、恐怖で大きく見開かれる。

次の瞬間――ぎらりと不揃いな磁器の鋭い縁が、大村の剥き出しの肩へ突き立てられた。

そこは、さっき猟犬に噛み裂かれ、骨が見えるほど深く抉られていた場所だ。傷口は、またしても容赦なくえぐられる。

...

ログインして続きを読む