第58章

小さな影が、巨大なテーブルと椅子の隙間、行き交う給仕たちの足元をするりと抜けていく。誰も、ほとんど気づかない。

狙いは明確だった。宴会場の片隅、飾りとして据えられた大ぶりの燭台へ。

燭台には白い長い蝋燭が何本も立てられ、炎が静かに揺れている。溶けた蝋がとろりと垂れ、場に古典めいた気配を落としていた。

鈴宮深は椅子によじ登り、つま先立ちになる。小さな手を伸ばし、ためらいもなく――勢いよく燃える一本を引き抜いた。

ぱちぱちと跳ねる火が手元で踊り、その光が彼の瞳を照らす。冷たい光。年齢に似つかわしくない、湿った陰り。

蝋燭を玩具でも扱うように握ったまま、深は音も立てずに主卓のあたりへ戻っ...

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