第62章

リビングは、ふたたび静けさを取り戻した。

鈴宮京也はソファに深く身を沈め、目を閉じる。眉間に溜まった疲労の影が、さっきよりも濃くなっていた。

ここ数日、鈴宮智也の件を揉み消し、後始末の家中の噂や、これから起こり得る面倒を捌くために、神経を削り続けてきたのだ。

あの年寄り連中は表向きは押さえ込めても、腹の底の不満と算段が止まるはずもない。

渡部綾香は、その眉間の皺に気づいた。

手にしていた本をそっと置き、立ち上がる。音を立てずに京也の背後へ回った。

彼女が近づいた瞬間、鈴宮京也の身体が、ほんのわずかに強張る。

ほとんど反射に近い警戒。危険の中で生きるうちに染みついた癖だ。誰であれ...

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