第65章

そう言って、奪い取るように手を伸ばした。

佐藤は腕をわずかに動かし、鈴宮クルミの指先をするりとかわす。同時に身体を半歩ひねって書類を胸元へ寄せ、守るように抱えた。口元の笑みだけは崩さない。

「クルミさん。こちらは渡部さんが処理される私的な書類です。許可なくお目にかけるのは控えさせていただきます。渡部さんのご用件にご興味がおありでしたら、直接お尋ねください」

「……あんたっ!」

鈴宮クルミは空振りしたうえ、柔らかい言葉で突き返され、面子を潰された。頬が引きつり、声が跳ね上がる。

「いい度胸じゃない! よそから来た使用人のくせに、私にそんな口を利くの?! 見せなさいよ、何が悪いの! 鈴...

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