第106章

「うつ病?」

私は目を丸くした。信じられないという思いと同時に、どこか滑稽さすら胸に込み上げてくる。

頭の中が混乱し、私は信じられないとばかりに首を振った。

「佐藤美咲とは長年の付き合いだし、同居してもう四年以上にもなるわ。けれど、彼女がうつ病だなんて素振り、一度だって見たことがない。こんな事件を起こしておいて、急にうつ病患者だなんて……いくらなんでも、うつ病を安易な言い訳にしすぎじゃない?」

心の中は怒りと悔しさで溢れかえりそうだった。眼窩に涙が溜まり、今にも決壊しそうになる。けれど私は奥歯をぐっと噛み締め、必死に堪えた。その一雫をこぼすまいと、堅く誓って。

佐藤美咲はた...

ログインして続きを読む