第124章

考え事に没頭しすぎていたせいか、山本翔一のキスに応えるのを忘れていた。

彼は舌打ちをして動きを止める。片手で腹を強く押さえ、痛みを堪えているようだが、もう片方の手は優しく私の耳朶を弄んでいる。その柔らかな指先の動きがくすぐったくて、私の表情は知らず知らずのうちにどこか艶めかしいものになっていたのかもしれない。

山本翔一は冷ややかに鼻を鳴らした。

「今は色っぽい顔をしておいて、さっきは何を考えていたんだ?」

その言葉にはからかうような響きがあったが、同時に隠しきれない不満も滲んでいる。どうやら私が上の空だったことが気に入らないらしい。

彼にそう問い詰められ、不快感がこみ上げる。だが同...

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