第343章

私と大前恭也は肩を並べ、大前さんの書斎を後にした。

「今の生活には、もう心底うんざりだ」

大前恭也が不意に足を止める。

「俺はただ、平沢雪乃とささやかに暮らしたいだけなんだ。絵を売ろうが、放浪しようが構わない。貧乏暮らしの方が、今よりずっとマシだ」

そう語る指先は無意識に金縁の眼鏡を弄り、レンズの奥の瞳は陰りの中で微かに震えていた。

憤怒に歪むその横顔を見つめ、私は慎重に言葉を選ぶ。

「考えたことはないの? 大前さんのなさることは全て、あなたのためなのだと」

「俺のため?」

大前恭也は鼻で笑った。

「あの人は山本グループを強引に奪い取り、今度はあんたの手からあの研究プロジェ...

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