第392章

私は眉根を瞬時に寄せた。突如として降りかかった危機の予感が、胸の中に巣食っていた葛藤をいくらか押し流していく。里弥から視線を外し、私は全神経を山本翔一へと注いだ。

「彼ら、また何か動きを見せたの?」

焦燥に駆られて問い詰める私の声は、無意識のうちに上ずっていた。先ほどまでの恋愛沙汰における逡巡や迷いは、もはや微塵も残っていない。

里弥はプレゼントを貰った喜びに浸りきっており、大人たちの間に漂う空気の変化になど気づく様子もない。満面の笑みを浮かべ、手にした玩具を弄りながら、時折楽しげな笑い声を漏らしている。

中村宗祐は傍らで静かに佇んでいた。その表情を一瞬、寂しげな影が過る。おそらく彼...

ログインして続きを読む