第65章

佐藤美咲は体調が回復すると、素直に復学した。出所後、山本翔一の手配で新しい学校に転入した彼女は、かつての悪友たちとは二度と関わらないと誓っていた。卒業まであと半年。最後のキャンパスライフを無駄にしたくないという思いもあり、私が口を挟むまでもなく、彼女は自ら学校へ通い始めた。ただ、他の学生とは違い、彼女は寮に入ることを頑なに拒み、毎日街の反対側にある山本家の別荘へと帰宅していた。

佐藤美咲が学校へ行ってしまうと、一人残された私は手持ち無沙汰になり、鈴木グループへ顔を出すことにした。山本翔一に社長へ任命されて以来、まだ一度もその肩書きで公の場に姿を現していなかったからだ。

母の他界後、鈴木グ...

ログインして続きを読む