第73章

山本翔一は、私の唇に人差し指をそっと当てた。

「しっ、佐藤美咲がまだ寝てる……」

彼は声を潜めたが、その瞳に宿る熱情までは隠しきれていない。

私は彼の手を首の後ろへ回し、指先で背骨をなぞるように優しく撫でた。

「大丈夫よ。あの子はまだ子供だもの、こういうことは分からないわ」

私も声を潜め、わざと山本翔一の耳元で囁く。

実はさっきから気づいていた。佐藤美咲は起きている。彼女はベッドで静まり返っているが、その瞼が絶えず震えているのを私は見逃さなかった。実の兄と肛門が裂けるほど激しく交わったような雌猫が、こういうことを知らないはずがない。だが、私はあえてそう言ったのだ。

山本翔一は勢...

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