第77章

優しく抱きしめられているはずなのに、私は息が止まるほどきつく締め付けられていた。耳に届くのは甘い声なのに、そこには底知れぬ恐怖が潜んでいる。佐藤美咲が、私の耳元でそっと囁いた。

「誰にも私とお兄さんを引き離すことなんてできないわ。たとえあなたが弁護士になったとしてもね」

脅迫めいたその言葉に、私の心臓がドクリと跳ねる。佐藤美咲は身体を離すと、晴れやかな笑みを一つ残して立ち去っていった。

彼女がさらなる行動に出る予感はあった。だが、現時点では証拠がない。とはいえ、彼女は私に警告を与えてくれたのだ。ならば、受けて立とうじゃないか。私は遠ざかる彼女の背中を見つめながら、心の中で戦線布告した。...

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