第83章

夜の帳が下り、一台の車が静寂に包まれた公道へと滑り込んだ。

エンジンの轟音がその静寂を打ち破る。ヘッドライトはあたかも鋭い双眸の如く、闇を切り裂きながら真っ直ぐに彼方を射抜いていた。その道の尽きるところに、一軒のラブホテルが佇んでいる。

そのホテルはまるで世俗から隔絶された独立世界のようだ。静謐と神秘、そして温もりに満ち、訪れる恋人たちを待ち受けている。

「なかなかいい場所を見つけたな」

山本翔一は車を降り、目の前に聳える金碧輝煌なホテルを見上げた。夜色に映える黄金の光は濃厚かつ眩く、まるで童話に出てくる黄金の城のようだ。ホテルの正門は神秘的な入り口となって、私たち二人を誘い込んでい...

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