第87章

私と山本翔一の関係は、今にも崩れ落ちそうな砂上の楼閣だ。それを修復するため、私はこれから大胆な賭けに出る。

指先が痺れるような感覚を覚えながら、彼に手を伸ばしてその頬に触れた。ジョリッとした無精髭の感触。かつては慣れ親しんだはずなのに、今はどこか他人のような距離感を感じて、胸がざわつく。彼の喉仏が上下するたび、私の心という湖に小石が投じられたかのように、波紋が広がっていく。

彼の体温を感じられる距離までゆっくりと近づく。その熱は安らぎを与えると同時に、どこか恐ろしくもあった。首に腕を回すと、体が強張るのが自分でもわかった。心臓が早鐘を打ち、山本翔一という男の肉体を渇望していると訴えかけて...

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