第7章

拓真の苛立った声が電話越しに聞こえてきた。何を言っているのか聞き取ろうと耳を澄ませたが、和人は窓際へ移動し、意図的に声を潜めていた。

私は壁に寄りかかった。もう少しでキスするところだった――あの間の悪い電話がなければ。心臓はまだ、その瞬間のせいで高鳴っている。

「どうしてそんなことを聞くんだ?」和人が私をちらりと振り返りながら尋ねた。その視線に、私の頬は一瞬で熱くなる。彼の瞳には、満たされないままの熱と、そしてどこか申し訳なさそうな色が浮かんでいた。

電話の向こうで拓真が私の名前を口にするのが聞こえ、体が無意識にこわばった。六年間で刷り込まれた恐怖と従順さが、私に隠れたいと思わ...

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