第11章 希実、生きている

「あれが松本家のお嬢さん? すごい……綺麗!」

「緒方殿の立場なら、あんな美女が目の前にいたらさ。松本家が必死こいて縁談を押しつけるまでもないだろ」

ざわざわとした囁きが、緒方廷治と江口惟純の耳にも届く。

緒方廷治の表情は、複雑だった。

松本霞澄は、これまで一度だって彼の前で着飾ったことがない。――いや、着飾らせなかった、が正しい。

人ひとり死なせた女が、花のように笑って飾り立てるなど許せない。そう、彼が許さなかった。

だが今夜、初めて見る。

息を呑むほど華やかで、どこか高貴で。

――美しい。

それはただの事実として、否定しようがなかった。

隣の江口惟純は、わざわざ手を叩...

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