第14章 彼はどうして自分にキスしたのか?

改造されたロールスロイスだった。後部座席は異様なほど広い。

松本霞澄には見慣れた車だ。ここ三年、緒方廷治にあの後部座席へ押さえつけられ、息が詰まるような速度の中で何度も翻弄されてきた。

緒方廷治の車。

まさか、こんなに早く出て行くなんて。

……もっとも、それは彼女には関係ない。

松本霞澄は空気を読み、道端へ身を寄せて通り道を空けた。

ロールスロイスは加速し、彼女を追い越す――はずだった。ところが次の瞬間、ぐいっとハンドルを切り、そのまま進路を塞ぐように停まる。

空がぴかりと裂け、湿った匂いと青い草の香りを含んだ風が、霞澄の髪をふわりと煽った。

ドアが開く。

最初に見えたのは...

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