第16章 そんなに嫉妬するなら、お前も脚を開け!

松本霞澄は、自分が先に上階へ上がっていたことを心から安堵した。

この位置なら、松本希実からは見えない。けれど――声は、はっきり届く。

「……私、妊娠したの」

必死に声量を落としているのに、その四文字だけは、やけに鮮明に霞澄の耳へ入り込んできた。

――やっぱり。

松本希実は、寂しさに耐えられるタイプじゃない。こんなことをしでかしても、驚きはない。

「は? 何それ、『あんたに関係ない』? 私、二カ月前に寝たのあんたしかいないんだけど!」

希実が急に声を荒らげた。怒りでピリピリしていて、電話の向こうの男と口論になっていく。ときどき英語まで混じる。

三、四分もすると、希実の声は少しず...

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