第20章 彼女の赤ちゃんに二の舞を踏ませてはならない

彼の冗談めいた言葉にはどこか艶が混じっていて、酒井校長もまた、含みのある笑みを浮かべた。

松本霞澄の胸は、すうっと冷え切った。

緒方廷治の狙いが分かったのだ。たった二言三言で、酒井校長の中で自分の評価は底まで落ちる。――「この学校の学生」ではなく、「緒方廷治の愛人」に戻された。

松本霞澄は緒方廷治の隣で黙ったまま立ち尽くし、ぼんやりと人形めいた置物を演じるしかなかった。

そんな彼女がはっと我に返ったのは、緒方廷治が「以前の旧設備と、中に入っているデータも一緒に引き取りたい」と言い出したときだ。

松本霞澄は驚いて顔を上げた。そんな要求、酒井校長が受け入れていいはずがない。

監視カメ...

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