第28章 大胆不敵なカナリア

「今夜、よかったら一緒に食事でもどうかな。なかなか美味い店を見つけたんだ」

松本霞澄は黙り込んだ。

本音を言えば、今は誰にも会いたくなかった。ただ一人で、静かにしていたい。

けれど時川樹の声には隠しきれない期待が滲んでいたし、霞澄のほうにも彼に話しておきたいことがあった。結局、その誘いを受けることにした。

四十分後、松本霞澄はマンションのエントランス前に姿を見せた。

時川樹はカーキ色のレザージャケットに、黒いキャップ姿。ひと目見ただけなら、どこかのロックスターみたいだった。

「霞澄!」

松本霞澄を見つけた瞬間、それまで無表情だった時川樹の顔がぱっと明るくなる。手を振り、足早に彼...

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