第48章 彼女は最近もあまりに運が悪い

樋口介賀は松本霞澄に名刺を一枚ねじ込むと、勝ち誇ったように立ち去っていった。

命を救った恩だ。感謝のわかる「いい子」なら、当然――自分の望む「正しい選択」をするはずだ、とでも言いたげに。

けれど松本霞澄は、彼が最後に投げ捨てたひと言に、その場で固まった。

「金持ちに取り入ろうとばかりしてると、痛い目を見るぞ」

誰かに取り入ろうだなんて、考えたこともない。

それでも――これは本当に、ただの「不運」なのだろうか。

だとしたら最近の自分は、不運にもほどがある。

療養院を出ると、松本霞澄はもう一度だけ保坂昭江に電話をかけた。

そして、通話はすぐに弾かれた。

ブロックされている。

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