第52章 少女時代はすでに過去となった

松本霞澄は認めざるを得なかった。――本気で、肝を冷やした。

ちょうど日付が変わったばかりの深夜0時過ぎ。辺りはしんと静まり返っていて、しかもその手はどう見ても男のものだった。怪異の類じゃなかったとしても、ひとり身の女がぞくりとするには十分すぎる。

彼女はすでに非常ボタンに指をかけていた。少しでもおかしな気配があれば、即座に警報を鳴らすつもりだった。自分の身を守るために。

だが次の瞬間、見慣れた顔が現れ、松本霞澄の警戒を打ち消した。

樋口介賀。

無表情のまま中へ入ってきて、松本霞澄をちらりと見た。その目は、まるで赤の他人でも眺めるみたいに冷たい。

けれど、むしろそのくらいのほうが彼...

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