第53章 この若い女を侮った

「退去? でも契約期間がまだ残ってるだろ! それじゃ契約違反だ!」

松本霞澄は、さほど多くもない荷物をまとめ終えると、大家に退去の話を切り出した。

二日前。彼女は羽田絵亜と夜通し語り合い、最後には羽田絵亜もその決断を受け入れてくれた。

大家がこう出てくるのも、霞澄の想定内だった。霞澄は丁寧に言う。

「承知しています。でも、急な事情で住み続けられなくなってしまって……こうしましょう。敷金は違約分としてそのまま結構です。返金はいりません。残りの家賃も受け取らなくて大丈夫です」

かなり譲歩した条件のはずなのに、大家は満足しない。

眉をひそめ、抜け目のない目で霞澄を二度ほど値踏みするよう...

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