第55章 身の程知らず

松本霞澄は、息を詰めるようにして話に耳を傾けていた。

――と、そのとき。

秘書室のドアがいきなり開き、二十四、五歳くらいの若い女性が勢いよく入ってくる。

「松本さん、こんにちは。菊池青果です。加賀補佐に紹介されて来たんですけど……あの、お二人のうち、どっちが松本さんですか?」

松本希実がはっと我に返り、険しい顔で松本霞澄を睨みつけた。

「……私から話を引き出そうとしたの?」

あと一歩で核心に触れられそうだったのに――という小さな悔しさは、胸の奥に残った。けれど、すぐに思い直す。松本希実の性格なら、秘密なんて抱え込めない。接点さえ増やせば、いずれ聞きたいことは勝手に口からこぼれる。...

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