第57章 本当に?

松本霞澄は唇をきゅっと結び、ふいに緒方廷治へ微笑みかけた。

「……じゃあ、受け入れます」

天から降ってきた大当たりみたいな幸福が、緒方廷治の頭を一瞬で真っ白にした。

彼は霞澄の肩を掴み、食い入るようにその顔を見つめる。

「本当か? 本当に……いいのか?」

「受け入れる」と「いい」の間には、霞澄にとって埋めがたい違いがある。彼がわざと捻じ曲げているのかどうかは分からない。けれど、どうでもよかった。――すぐに、ここからいなくなるのだから。

霞澄は小さく頷く。

「はい。……いいです」

その瞬間、緒方廷治は力任せに彼女を抱き締めた。失って、ようやく取り戻した宝物でも抱えるみたいに。

...

ログインして続きを読む