第4章
浅桐瑠璃視点
彼の手にしたコーヒーカップが傾いた。
「なんだって?」
「この子はC大に行くのよ」お母さんの声は、思わず抱きしめたくなるほど、きっぱりとしていて迷いがなかった。
一瞬、誰も動かなかった。高橋尚樹はただお母さんをじっと見つめていた。やがて私の方に視線を移すと、その表情が困惑から不信へ、そしてパニックに近いものへと変わっていくのを、私は見ていた。
「C大?」
彼の声は奇妙に甲高く上ずっていた。
「冗談だろ?」
私は腕を組んで、彼の目をまっすぐ見据えた。
「いいえ」
「瑠璃、俺たちはT大って約束しただろ!」
彼の手の中でコーヒーカップが揺れた。
「...
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