第7章
浅桐瑠璃視点
私が入ったとき、カフェはほとんど空っぽだった。高橋尚樹が隅のテーブルで、スマホを覗き込むように背中を丸めて座っていた。
どうやって私の居場所を突き止めたんだろう。
ゆっくりと歩み寄る。彼が顔を上げると、その表情が一変した。まるで鏡の前でこの瞬間を練習でもしてきたかのように。高校時代、何かをねだるときに私に見せていた、あの弱々しくて甘えるような眼差しだ。
「瑠璃」
彼は立ち上がった。
「来てくれてありがとう。来てくれないかと思ってた」
私は彼の向かいの椅子を引き出したが、まだ座らなかった。
「時間は十分。話し始めて」
「せめて座ってくれないか?お願...
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