第15章 それは三年前のこと

三上汐浪から差し出された小切手を見て、天樹夢子はわけが分からず、訝しげに尋ねた。「お母様、これはどういう意味ですか」

三上汐浪は言った。「柊木嶋が北斗にあれだけ執着するのは、あの子から一儲けしたいだけよ。あの子が欲しいのはお金なんだから、私たち親子でくれてやればいいの」

「だから夢子、あなたこの小切手を持って行ってあの子に渡しなさい。そして母親と弟を連れてA市から出て行けって言うの。さもなければ、北斗から一銭たりともせしめようなんて思うなってね」

四億と書かれた小切手を見て、天樹夢子は泣くに泣けず、笑うに笑えなかった。

普段は聡明な三上汐浪が、なぜこんな時に限って訳の分からないことを...

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