第183章 病院、病院に送って

江川さんや他の使用人たちの名を泣き叫ぶが、天樹夢子はいまだかつてないほどの絶望と無力感に襲われていた。

「景陽」

家の中から誰も出てこない。腹部に走る周期的な激痛に、天樹夢子の目からは雨のように涙が溢れ落ちた。

今日、陸川北斗の言葉など聞くべきではなかった。彼が空港に迎えに来ると信じるべきではなかった。夏目緑と一緒に御臨湾へ帰るべきではなかった。家で彼を待つべきではなかった。

もし南湾に帰っていれば、さっきの野良猫に遭遇することも、こんな風に転ぶこともなかっただろうに。

「夢子」

絶望の中、天樹夢子が自力で立ち上がろうとしたその時、背後から不意に陸川景陽の声が聞こえた。

天樹夢...

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