第20章 写真の男が私だ

「ん?」陸川北斗の心地よい声が、優しく、そして艶めかしく応えた。

夫婦の息の合った連携に、柏木明珠はまだ反応できず、またもや呆然と立ち尽くす。

天樹夢子はわざとだ。彼女は絶対にわざとやっている。

なのに陸川北斗は彼女に合わせた。応じてしまった。それもあんなに艶めかしく。

「北斗兄さん」柏木明珠は信じられないといった様子で陸川北斗を見つめる。まるで目の前の陸川北斗が、以前から知っている陸川北斗ではないかのようだ。

我に返ると、彼女は再び天樹夢子に目を向けた。「天樹夢子、あなた北斗兄さんに薬でも盛ったんでしょう。今日は見逃してあげようと思ってたの。あなたがやった醜聞をみんなの前で暴きた...

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