第56章 触れてみなさい

「夢子」

三上汐浪は天樹夢子が来たのを見て、慌てて手招きして彼女を呼び寄せた。

天樹夢子は近づくと、小声で尋ねた。

「景陽、誰かにヤられちゃったの?」

……三上汐浪は答える。

「いえ、そこまで酷くはないわ」

陸川家では何か大事があると、いつも家族会議が開かれる。以前は滅多にないことだったが、天樹夢子と陸川北斗が結婚してからは、少々頻繁になっていた。

主座に座っていたお爺様は、天樹夢子が来たのを見て口を開いた。

「夢子よ、柏木家の話では、昨晩お前が一ノ瀬美鈴と明珠という娘をけしかけて人を殴らせたそうだな」

「お爺様、私にそこまでの甲斐性はありません。少しばかり真相を教えて差し...

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