第58章 嫉妬したの?

ドアが開かれ、望月良秀の秘書が降りてきた。「天樹さん」

現れたのが望月良秀だと見て取った柏木明景の口元に浮かんだ笑みは、明らかに意味深なものだった。

「杜崎秘書」天樹夢子は平然と挨拶を返す。

杜崎秘書はそれを見て、満面の笑みで天樹夢子に言った。「天樹さん、労働者の賃金未払い問題では本当にありがとうございました。望月秘書長がぜひ食事に誘い、直接お礼を申し上げたいとのことです」

天樹夢子は、「いいわよ」と応じると、柏木明景の方を向いた。「柏木様、では私はこれで」

柏木明景は一笑に付す。「陸川北斗のライバルも多いことだ」

その嘲りに対し、天樹夢子は顔色一つ変えずに二歩前に進...

ログインして続きを読む