第59章 騙すなんて言わないで

「それに景陽と流の件もあるわ。二人が私に離婚を説得しきれなかったからって、あなたはその二人を高原に左遷した。この二年あまり、あなたが家に帰ってきて私に優しく接したことなんて一度でもあった?」

他にも大小さまざまな出来事が数えきれないほどあったが、天樹夢子はもう数える気力もなく、彼にいちいち挙げるのも面倒だった。そもそも彼女は昔のことを蒸し返すタイプではない。たいていのことは過ぎれば終わりにする。だが、陸川北斗がしつこく、ことあるごとに難癖をつけ、彼女に突っかかってくるのだ。

ついさっき帰宅した時もそうだ。彼女は上機嫌で話しかけたのに、彼の態度が悪くても気にしなかった。それなのに、彼はどう...

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