第111章 彼女のいいことを台無しにした

「おばあ様、私……」

桜井瑞希が黒崎幸枝に返事をしようとした、その瞬間だった。玄関の扉が勢いよく開く。

「おばあさま!」

水野優奈が焦りきった顔で駆け込んできた。身にまとっているのは、ついさっきまで婚約式で着ていたドレスだ。

鈴木謙介はこの状況を見て、黒崎恒一に申し訳なさそうに頭を下げる。

「すみません、黒崎社長。水野さんに頼まれて、付き添って来ただけで……」

黒崎恒一は表情ひとつ動かさず、淡々と言い放った。

「もういい。帰れ。お前の出る幕じゃない」

「……失礼します」

鈴木謙介はそのまま黒崎家を後にした。

玄関を出るとき、肌にまとわりつくような、黒崎家特有の張り詰めた空...

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