第12章 恋敵の対面

七時半が近づいた頃、課長の西村祐輔が慌ただしく桜井瑞希の前まで来た。

「今すぐ黒崎社長のご自宅へ行って、書類を取ってきてくれ。八時半に使う」

桜井瑞希は一瞬、言葉を失った。

「私が……黒崎社長の家に?」

「ごちゃごちゃ言うな。急げ。ここで新人はお前だけだろ。お前が行かなくて誰が行く」

そう言いながら、西村祐輔は鍵を桜井瑞希の手に押しつけ、念を押すように続けた。

「とにかく時間がない。書類は待ってる。それから今回の件も評価に入る。お前が会社に残れるかどうか、そこで決まるからな」

「……」

タクシーに乗り込むと、桜井瑞希は黒崎恒一の住所を告げた。けれど走り出した車内で、胸の奥...

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