第190章 サテュロスの薔薇と蛇

「おお客様、お目が高いですね。こちらは当店の新作メンズ礼服でして、普段は分かりにくいのですが、光が当たると上質な地紋が浮かび上がるんです。ほら、陽の光の下だと――蛇の鱗みたいな模様が出るでしょう」

店員はそう説明しながら、専用のライトを当てて見せた。

なるほど、生地に潜んでいた暗い紋様が、照明を受けてきらりと波打つ。派手すぎないのに、どこか覇気と落ち着きが同居していた。

水野優奈は思う。これはもう、黒崎恒一のために仕立てられた一着だ、と。

「恒一、これ……試してみない?」

「いいよ」

黒崎恒一は特に異論もなく頷いた。

そのとき、ちょうど桜井瑞希と関根承吾が奥のほうから出てきて、...

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