第206章 わがまま

桜井瑞希から電話を受けた関根承吾は、通話がぷつりと切れた瞬間、ただ事ではないと悟った。

さっきまで瑞希がいた場所へ引き返す。案の定、そこに彼女の姿はない。

会場を端から端まで探し、声をかけられそうな相手には片っ端から尋ねた。

――急がないと、取り返しのつかないことになる。

そんな焦りが、胸の奥でじわじわと膨らんでいく。

「関根さん、そんなにお急ぎで、どちらへ?」

不意に、諏訪宏光の秘書が進路を塞いだ。

関根承吾は立ち止まり、事情を手短に告げる。

「すみません。婚約者がいなくなってしまって……心配で」

秘書は一瞬考え込んだ。先ほど諏訪宏光から、もし関根承吾が桜井瑞希の不在に気...

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