第27章 元妻も桜井瑞希という名前らしい

桜井瑞希はその場を離れると、すぐにタクシーを拾ってアルバ広場へ向かった。車で来なかったのは、あとで酒を飲まされる可能性を考えたからだ。

嫌な予感がする。黒崎恒一がわざわざ呼び出したのだ。ろくな用事のはずがない。

案の定、広場に着いて電話をかけようとした瞬間――背後で、甲高いクラクションが鳴り響いた。

「っ……!」

びくりと肩が跳ねる。振り返ると、黒崎恒一が車から降りてくるところだった。冷えた視線が瑞希を上から下までなぞり、眉が不機嫌そうに寄る。

「その格好、何だ。今まで接待の席に出たことないのか?」

責める言葉と、感情の読めない無表情。その組み合わせに、瑞希の背筋がひやりとする。...

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