第28章 見殺しにする

一瞬にして、全員の視線が桜井瑞希へ集まった。桜井瑞希は慌てて、テーブルの上で割れてしまったグラスの破片をかき集める。

「すみません、すみません。どうぞ、続けてください」

すると誰かが面白がるように言った。

「黒崎社長の元奥さんの話が出た途端、ずいぶん大きい反応だねえ?」

桜井瑞希は引きつった笑みで返す。

「誤解です。たまたま同じ名前なだけで……紛らわしくて、申し訳ありません」

しゃがみ込み、床に散ったガラス片を拾おうとした、その瞬間。

黒崎恒一が、いきなり彼女の手首を掴んだ。

桜井瑞希はびくりとして、反射的に「大丈夫です、私が片づけますから」と言いかける。しかし――

黒崎恒...

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