第45章 ママの悪口を言う人がいる

突然、コンコンと扉が叩かれた。

「黒崎社長、至急ご署名いただきたい書類がございます。失礼して入ります」

言い終えるより早く、外の人間は勝手にドアを押し開けて入ってくる。あまりに唐突で、桜井瑞希も黒崎恒一も反応が遅れた。瑞希は慌てて背を向け、外しかけたボタンを指先で素早く留め直す。

――見られた。

菅田晴海は、その「慌てた一瞬」を確かに目にしてしまった。自分でも、こんな気まずい場面に踏み込むとは思っていなかったのだろう。彼女は視線を逸らし、何事もなかった顔で黒崎の前まで歩く。

「黒崎社長、申し訳ありません。本当に急ぎでして……先方がすぐ必要だと」

差し出された書類を受け取り、黒崎は...

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